第9章 配電について
(はじめに)
配電とは、送電系統から送られてきた電力を、電力使用者である需要家へ送り届ける最終部分の電力系統のことである。
わが国で用されている配電電圧は,低圧、高圧、特別高圧の3種類があり、その配線方式には、単相2線式、単相3線式、三相3線式、三相4線式等がある。また配電設備は架空線設備と地中線設備とに大別される。今回は、これら配電系統について解説を行う。
1 配電系統の概略
2 低圧配電線
3 高圧配電線
4 特別高圧配電
5,配電線の供給方式
(5−1)樹枝状(放射状)配電方式
(5−2)環状(ループ)配電方式
(5−3)低圧バンキング方式
(5−4)低圧レギュラーネットワーク配電方式
6,配電線の受電方式
(6−1)スポットネットワーク方式
(6−2)本線・予備線方式
7、地中配電線路の布設方式
(7−1)直接埋設式
(7−2)管路式
(7−3)暗きょ式
1、配電系統の概略
送電系統から変電所へ送られてきた特高電圧(154KV)を、変電所内の配電用変圧器で22KV又は6.6KV に降圧し、大規模ビルや工場へ配電する。なお小規模工場や一般家庭には、配電線変圧器(柱上変圧器)等により100Vや200Vに降圧する。
2、低圧配電線
低圧負荷は、電灯負荷と動力負荷に大別できる。電灯負荷には単相3線式が、動力負荷には3相3線式が主に採用されている。
@ 単相3線式100/200〔V〕
一般家庭の電気製品の大半は単相負荷である。そのため従来は単相2線式100〔V〕が採用されていた。しかし、単相3線式100/200〔V〕の方が、電圧降下や電力損失を軽減でき,電線量を節約できるので、現在では大部分がこの方式になっている。
A三相3線式200〔V〕
小規模工場の負荷であるポンプや工作機械、動力機器などは、大半が三相負荷である。そのためこれらを使用する場所においては、三相3線式200〔V〕が主に採用されている。
3.高圧配電線
わが国の高圧配電系統は、6.6〔kV〕三相3線式で、中性点非接地方式が主に採用されている。中性点非接地方式が採用される理由は、1線地絡事故時の地絡電流を抑え、弱電設備への電磁誘導障害を低減させるためである。地絡電流が小さいと事故検出が難しいので、信頼度の高い保護方式の設置が必要となる。配電方式としては、樹枝状(放射状)方式やループ方式が一般的に採用されている。
4、特別高圧配電
特別高圧配電は、電力需要増大に伴って採用された方式であり、20 kV 級配電方式とも呼ばれている。配電電圧は22kV(又は33 kV)であり、三相3線式の中性点抵抗接地方式が主に採用されている。
高圧配電系統と同じように非接地方式も可能であるが,1線地絡事故時の保護継電器の動作を確実にするため、抵抗接地方式が基準となっている。
また、20〔kV〕級配電の供給方式には,地中配電方式と架空配電方式とがある.
地中配電方式は,都市部の大規模ビルなどの超過密地域において適用され,架空配電方式は、都心埋立地、大規模ニュータウン、工業団地などの高圧・特別高圧負荷が集中する地域に適用されている。
スポットネットワーク方式、レギュラーネットワーク方式と呼ばれる方式が採用されている。供給方式は3回線を標準とし、このうち1回線が停止しても残りの健全回線によって全負荷を供給できるように配慮している。
架空配電方式は、都心埋立地、大規模ニュータウン、工業団地などの高圧・特別高圧負荷が集中する地域に適用されている。地中配電ほど高信頼度を要求されないので、系統構成は本線・予備線方式または樹枝状(放射状)方式が一般的に採用されている。
5,配電線の供給方式
(5−1)樹枝状(放射状)配電方式
樹枝状配電方式は、高低圧配電線で多く採用されている方式である。この概略図を図(6)に示す。図のように、幹線と分岐線を適当に区分する区分開閉器、区分された区間に隣接幹線から電気を送受する連絡開閉器などで構成されている。この方式は需要家に樹枝状に電気を供給するもので、構造が単純であり、容易に需要増に対応できる。
平常時は区分開閉器が「閉」で、連絡開閉器が「開」である。故障発生時は、故障区間の区分開閉器を開にして故障区間を切り離し、健全区間には他の区間から連絡開閉器を介して電気を供給する方式である。
この方式の特徴をあげると,
@構成が単純であり、建設費安価である。
A需要家増に対して、容易に対応が可能である。
B他の配電方式と比べると供給信頼度が低い。
(5−2)環状(ループ)配電方式
ループ配電方式の概略図を図(8)に示す。図のように、2つの配電線を結合開閉器で結び、ループ状に構成したものである。事故等が発生した場合は、事故点両側の区分開閉器を「開」にする。しかし、構成がループ状なので、健全区間は常に電気が供給される方式である。
この方式には,結合開閉器を常時「開」にしておき,故障発生時に「閉」にする常時開路式と,結合開閉器を常時「閉」にしておく常時閉路式とがある。
この方式の特徴を次にあげる.
@故障が発生しても,その区間を除けば、健全部には常に電力が供給される。
A電力供給信頼度が高い。
B常時閉路式では、電圧降下や電力損失が軽減される。
(5−3)低圧バンキング方式
低圧バンキング方式は、同一の高圧配電線に接続されている2台以上の変圧器の二次側を、低圧配電線で並列に接続し配電する方式のことである。この方式の特徴を次にあげる.
@電圧降下や電力損失の軽減が図れる。
A負荷増加に対する融通性がある。
B電力供給信頼度が高い。
C保護協調が適切でない場合,カスケーディングにより広範囲の停電を起こすおそれがある。
(5−4)低圧レギュラーネットワーク配電方式
低圧レギュラーネットワーク配電方式は、同一バンクから2回線以上のフィーダを引き出し,各フィーダからT分岐して、断路器からネットワーク変圧器を経由し低圧側はネットワークプロテクタを介して格子状に接続されて、負荷に電力を供給する方式である。
この方式は1つのフィーダが故障しても、他のフィーダで電気を供給できるので、需要家においては、ほぼ無停電化が実現できる。
この方式の特徴を次にあげる.
@電力供給信頼性が非常に高い方式である。
A建設費が高い。
B負荷密度の高い地域に採用される。
6,配電線の受電方式
(6−1)スポットネットワーク方式
スポットネットワーク方式は、大規模ビルなどの大容量負荷で高信頼度性が要求される施設に導入される方式である。
この方式は20〔kV〕級地中配電線の2または3回線からT分岐して引き込み、それぞれ受電用断路器を経てネットワーク変圧器に接続し、各低圧側はネットワークプロテクタ(プロテクタヒューズ+プロテクタ遮断器)を経て並列に接続して、ネットワーク母線を構成するものである。
この方式の特徴は次の通りである。
@電力供給信頼性が非常に高い方式である。
A特高側の受電用遮断器が省略されて断路器のみとなり、受電設備が簡素化される。
Bネットワークプロテクタの自動制御機構により,事故等の対応が自動化できる。
(6−2)本線・予備線方式
本線・予備線(本予備線)方式は,2回線フィーダからT分岐して引き込むもので、常時は本線側の開閉器を「閉」、予備線側の開閉器を「開」にし、本線側から受電するものである。本線側が事故等により停電した場合は、本線側の開閉器を「開」、予備線側の開閉器を「閉」にし、予備線側に切り替える方式である。この方式は、瞬時に開閉器を動作させて予備線側に切換えることができるので、短時間の停電で供給を継続できる。
この方式の特徴を次にあげる.
@作業停電が容易に行える。
A系統構成が単純である。
B1回線受電と比べると電力供給信頼度が高い。
7、地中配電線路の布設方式
地中配電線路の布設方式には、直接埋設式、管路式,暗きょ式がある.
(7−1)直接埋設式
直接埋設式とは、ケーブルを直接地中に埋設する方式であるが、一般的にケーブルの保護のために、トラフなどに納めて埋設する。埋設深さは電気設備基準より定められている.車両その他の重量物の圧力を受けるおそれのある場所では土冠りを1.2〔m〕以上,その他の場所では土冠りを0.6〔m〕以上としている。この方式は,ケーブル条数が少なく,将来、ケーブルの増設や引き換えなどがない場所に適している。
(7−2)管路式
管路式とは、鋼管、硬質ビニル管、可とう電線管などを地中に埋設し、所定の長さごとにマンホールを設けて、管路中にケーブルを挿入する方式である。
この方式はケーブル条数の多い場合や,交通事情などから再度掘削工事による増設が困難な場所に採用される.
(7−3)暗きょ式
暗きょ式とは、洞道や共同溝をあらかじめ整備し、この中にケーブル等を布設する方式である。
変電所の引出口など,ケーブル条数が多く場合や、ケーブルの増設等が多い場所に採用される。なお、大規模なものとしては、電気,通信,ガス,水道などを同一の共同溝に布設し多目的に利用する共同溝方式もある。